「仮想通貨」から「暗号資産」へ?【考察】

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長らく「仮想通貨」という言葉は、特に2017年以降の仮想通貨市場の高まりとともに、日本で定着してきたワードでしたが、今後その名称が変更される可能性があります。

仮想通貨の呼び名「暗号資産」に? 金融庁が検討中:朝日新聞デジタル
 金融庁は26日、仮想通貨の呼び方を「暗号資産」に変える検討を始めた。相次いだ不正流出事件や相場の乱高下を受け、仮想通貨は円やドルなど法定通貨とは異なり、投機的に扱われる資産として規制する対象として位…

この投稿では、その妥当性や、本当に「仮想通貨」が「暗号資産」という名称に変更され得るのかを検証します。

1. 現在、なぜ「仮想通貨」と呼ばれているのか

1.1 仮想通貨概念の広まり(2009年)

「仮想通貨」という言葉を誰が提唱し、いつから使用されてきたかは明確ではありませんが、Virtual-Currencyを広めた有名なものの一つとしては、2009年の以下の記事が挙げられます。

'Virtual currencies' power social networks, online games - CNN.com
When Santiago Martinez wants to give his friends birthday presents, he buys a cake or flowers or sometimes a teddy bear.

この記事の中では、セカンドライフというゲームやSNS上で使用される仮想通貨の事を取り上げ、いずれインターネット上でとても重要なものとなっていくことを示唆しています。

ただし、この記事の中ではビットコインについては全く触れられていないため、当時どれだけ知名度が低かったかよくわかる事例の一つでもあります。

1.2 FinCENによる仮想通貨の定義(2013年)

アメリカ合衆国財務省の局である、FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)は、2013年に発表したガイダンスで、「仮想通貨」を定義しました。

FIN-2013-G001

このガイダンスの中で仮想通貨は、「本物のお金」の対義語と位置づけられており、法定通貨としての価値を持たないものとされています。

また、ガイダンスの中では、Virtual-currency(仮想通貨)はCentralized Virtual Currencies(中央集権的仮想通貨)とDe-Centralized Virtual Currencies(非中央集権的仮想通貨)の2つに分けられるとされています。

そして、非中央集権的仮想通貨は、

  • 中央集権的な貯蔵場所をもたず、
  • 人々が自己のコンピューティングパワーや製造努力によって得ることができるもの

とされており、具体的にはビットコインの事を示していたことが推察されます。

1.3 EBAによる仮想通貨の定義(2014年)

EBA(欧州銀行監督局)は2014年に仮想通貨を、「中央銀行等に発行されたものではないが、デジタル価値を有するものであり、移転性や貯蔵性があり、電子的取引に使用できるとして一般的に受け入れられたもの」と定義付けました。

http://www.eba.europa.eu/documents/10180/657547/EBA-Op-2014-08+Opinion+on+Virtual+Currencies.pdf

この文章の中で、仮想通貨はマネーロンダリングに使用される可能性等は危惧されていたものの、然るべき規制等を行い、慎重に取り扱っていけば、既存の金融分野を発展させるうえでも重要なものであるとされました。

1.4 日本の改正資金決済法の仮想通貨の定義(2017年)

日本で2017年4月に施行された、改正資金決済法第2条第5項の中では、以下の通り仮想通貨が定義されました(一部抜粋)。

  1. 「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」
  2. 「不特定の者を相手方として相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」
資金決済に関する法律
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・規則)の内容を検索して提供します。

上記において、第1号はビットコイン等広く決済等に使用できるものを指し、一方で第2号は、その他草コイン等はそのままでは財産的価値を有しない一方で、第1号に挙げる様なコインとの交換によって、財産的価値が担保されるものと解釈できます。

また、上記の他に主に、仮想通貨交換業の登録制、仮想通貨交換業者の業務規制、仮想通貨交換業者への監督、仮想通貨交換業者の本人確認義務(犯罪収益移転防止法)の規定が設けられ、仮想通貨の取り扱い一般に関して広く規制を行う結果となりました。

なお、「暗号」を使用するかどうかは全く触れられておらず、「仮想」的なバーチャルマネーとして、広く解釈できる定義となっています。

2. 「仮想通貨」という言葉の問題点

「仮想通貨」という言葉には、様々な誤解を生む要因があります。それを一つずつ検証していきましょう。

2.1 「仮想」という言葉の曖昧さ

「仮想」という言葉から、実際の価値が全くないようなものを連想してしまう方もいるかと思います。念のため辞書的な意味を確認してみましょう。

仮想

意味:

[名](スル)実際にはない事物を、仮にあるものとして考えてみること。仮に想定すること。「火災を仮想した避難訓練を行う」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

例文:

・・・独り相撲だと思いながらも自分は仮想した小僧さんの視線に縛られたようになった。自分はそんなときよく顔の赧くなる自分の癖を思い出した。もう少し赧くなっているんじゃないか。思う尻から自分は顔が熱くなって来たのを感じた。 係りは自分の名前をなか・・・

出典:<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>

梶井基次郎の例文からも、「仮想」という言葉に着目すると、やはり思念上の実在しないものというニュアンスが強いですね。

以上の事からも、仮想通貨のシステムについて知らない方にとっては、「本当に実在するものなのか?」「空気を買わせるようなもので詐欺ではないか?」といった疑問が生じても、何らおかしくはありません。

従って、財産的価値を持つもののニュアンスとしては、あまり良くない表現であると考えられます。

2.2 本当に「通貨」なのか?

そもそもビットコイン等を「通貨」と呼んでいいか疑問があったり、不自然に思っている方も一定数いるかと思われます。そこで、辞書的な「通貨」の意味を再確認しましょう。

つうか【通貨】
流通手段・支払い手段として機能する貨幣。本位貨幣・銀行券・補助貨幣・政府紙幣などや、取引の決済に使われる預金通貨をさす。広義には貨幣と同義。法貨。

出典 三省堂大辞林 第三版

上記の通り、通貨とは一般的には「法貨」であり、国の法によって認められた流通手段かつ支払い手段と言うことができるでしょう。

しかし、ビットコイン他の暗号通貨が現在、一般的な決済手段として、例えばスーパーでの買い物、税金の支払い、その他用途で使用されているかと言うと甚だしく疑問です。つまり、通貨の一般的な特徴である「通用力」を著しく欠いているのが現状でしょう。

そして、後述の様にG20では通貨としての特性を欠くものとして、「Crypto Asset(暗号資産)」という言葉が使用されています。少なくとも、通貨は基本的に国が認めてなりたつ概念であるため、国が否定されたら「通貨」ではないと考えられます。
※「法定通貨」と「その他通貨」という分け方で考えた場合、仮想通貨は「その他通貨」となりますが、その性質から「通貨」という言葉自体が取り払われる可能性は十分あり得るという解釈です。

3. 国際的な呼称は「暗号資産」

3.1 G20における呼称は「暗号資産」

先述のとおり、先進国の中央銀行総裁会議であるG20では、仮想通貨のことを「暗号資産」と呼ぶことに関して合意しています。

G20「通貨の特性欠く仮想通貨は暗号資産と呼ぶ」
G20「通貨の特性欠く仮想通貨は暗号資産と呼ぶ」

そして、暗号資産に関しては当時の時点では以下の特徴を持つとされました。

  • 暗号資産による技術革新は、金融システムの効率性や経済を幅広く改善する可能性がある
  • 暗号資産は、消費者、投資家保護、市場健全性、脱税、マネーロンダリング、テロ資金供与に関する問題がある。
  • 暗号資産は、ソブリン通貨の主要な特性を欠く
  • 暗号資産は、今後の金融の安定に影響を及ぼす可能性がある。

上記の特徴からもわかる通り、「通貨」として扱うにはあまりに問題が多い一方で、

将来的な可能性や資産としての価値は否定されていない

ことが分かります。

個人的にも、「暗号資産」という呼称を用いることにより、既存の電子マネー等との区別化ができ、暗号技術を用いた資産ということで、マイナスなイメージは無くなったかと思われます(まだ若干慣れませんが笑)。

3.2 日本における「暗号資産」呼称に関する議論

「仮想通貨」から「暗号資産」にするかについては、金融庁主催の「仮想通貨交換業等に関する研究会」で議論がなされています。

仮想通貨交換業等に関する研究会

この研究会の第9回目では、「仮想通貨の登場当初は通貨として機能するといった考えもあったが、現在、あまり通貨として使われているような実態はない」という意見があった一方で、「仮想通貨」を「暗号資産」と言い換えることで、「また新しいものが出てきたというような誤解を与えるのでは?」と心配をする声もあり、様々な事件が起きたあとに「名前を変えて新たに売り出したというようなことにしたくない」といった意見もあったとのことです(以下の仮想通貨Watchの記事を参考)。

金融庁が「仮想通貨」の呼称について議論、G20など世界的には「暗号資産」という名称に 〜JVCEAの名称は仮想通貨交換業協会で継続「仮想通貨交換業等に関する研究会」第9回
 本稿では、11月12日に開催された金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第9回のイベントレポート第4弾として、「仮想通貨の呼称」について討議された会議内容を報告する。

そして、第9回研究会の結論としては、しばらくは「仮想通貨」という名称を使用し、もし「仮想通貨」から「暗号資産」へと呼称を変更する場合、国際協調の上で変更する旨を徹底して告知いただきたいとのことでした(以下の仮想通貨Watchの記事を参考)。

金融庁、「仮想通貨研究会の討議結果の総括」資料を第10回目の会議で発表 〜新制度や規制案の方向性の確定を目標に、仮想通貨を巡るさまざまな課題を整理
 本稿では、11月26日に開催された金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第10回のイベントレポート第3弾として、研究会にて議論されてきたこれまでの討議結果を総括した資料「論点整理」について報告する。「論点整理」は、本研究会の最後に当局より研究会のまとめとして発表が行われたものだが、ICOに関する議論については除くと...

個人的な感想としては、第9回の結論としてはしばらく「仮想通貨」を使用するとのことでしたが、いずれはほぼ確実に(G20で名称が変更されない限り)、「暗号資産」という言葉に移行するのではないかと考えています。上述の考察で指摘した問題点を解決するために、可能な限り早く移行していただきたいものです(名称変更に関する面倒な事は様々あるでしょうが、今後のあるべき姿を考えて、決定して行って欲しいですね。)。

4. 結論

上述の通り、個人的に「暗号資産」という名称には賛成であり、日本でもこの言葉が定着し、幅広く使用されていくことを望んでいます。

その皮切りに、当ブログでは以前まで「暗号通貨」という呼称を使用していましたが、それらを基本的に全て「暗号資産」という言葉に置換しました。

私自身、この言葉に慣れていくのは少々時間がかかりそうですが、「仮想通貨」という言葉には違和感がありすぎることや、「暗号資産」はG20での世界的な呼称であり、今後簡単にこの言葉が変化するとは考えにくいための決定となります。

このブログを読んでいただいている皆さんも、どちらの呼称が良いか、ご自分でも考えてみると面白いかもしれません!

5.追記

5.1 研究会最終報告書案(2018年12月8日)

仮想通貨の新規制、全容判明…顧客への弁済資金確保を義務付け
仮想通貨交換業者の規制のあり方を検討している金融庁の研究会が近くまとめる最終報告書案の全容が8日、分かった。万が一の流出事案などに備え、交換業者に顧客への弁済原…

金融庁主幹の仮想通貨交換業に関する研究会の最終報告書案によれば、「仮想通貨」の名称が「暗号資産」に変更される見込みとのことです。

やはりこの記事でも指摘した通り、「いやまだ時期尚早だ。仮想通貨という言葉も日本で一般的に認知されてるし」みたいな意見があったとしても、国際的な動向を考えれば、いずれは「暗号資産」という名称に統一せざるを得ないでしょう。

なお、この最終報告案には、他にも風説の流布の禁止等、必要な規制が織り込まれているため、今後もこの動向は要チェックしたいところです。問題はいつ法が施行されるかですね。。遅くならないと良いのですが。

 

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