以下の投稿では、暗号通貨の投資方法を各種比較したうえで、ビットコイン等の発行量が限定されているコインの効果的な投資方法を考察します。
頻繁な取引だけが投資ではない事を、少しでも周知出来たら幸いです。
1. 投資方法の比較
1.1 暗号資産投資の基本的な種類
ビットコイン等を投資する基本的な方法は、以下のとおり様々挙げられます。
- 取引所における現物取引
- 一部取引所におけるFX
- 貸仮想通貨による利率目的の一定期間のHODL
- ハードウェアウォレット等によるHODL
この内、どの投資方法が正解なのでしょうか??
投資方法自体を批判するつもりは無く、完全な正解は無いかもしれません。
それぞれ、特徴を見てみましょう。
1.2 取引所における現物取引やFX
少なくとも、取引所における現物取引、一部取引所におけるFXにはハッキングによるコインの盗難や消失の可能性が多大に考えられます。暗号資産が沢山集まる取引所に対しての攻撃は、ハッカーにとって大変旨味が大きいため、今後も間違いなく頻発します。
顕著な例としては、日本の大手取引所であった「コインチェック」でNEMが当時の価値で580億円分盗難に遭い、「Zaif」においてもモナコインを始めとした暗号資産が、約70億円分盗難に遭いました。投資面においても、特にFXは非常にボラティリティが高くなるため、投資初心者が行っても完全に博打になるでしょう。
1.3 貸仮想通貨サービス
また、コインチェックやGMO等が提供している貸仮想通貨サービスは、一定期間HODLするため、例えばコインの送付先を間違えてしまう等の事態は避けられますが、取引所自体がコインの盗難等によって破綻する様な場合には、その出資分を回収できなくなる恐れがあります。なお、期間が定められているため、明らかに相場が上がっていて売却したい時に売却できない恐れもあります。もちろん、上記で挙げたようなハッキングリスクは常に介在します。
1.4 ハードウェアウォレット等によるHODL
それでは、ハードウェアウォレット等によるHODLはどうでしょうか?
この場合、プライベートキー等の管理が「しっかり出来ている」前提であれば、取引所とは比べることが出来ないほど盗難リスク等は少なくなり、また、貸仮想通貨サービスの様に、一定期間の取引制限が課される心配もありません。もちろん、取引所に預けている場合と比較して、取引したい時に一手間掛ける必要はありますが、多大な量のコインを盗まれるよりは随分ましでしょう。
従って、基本的に投資の中級者以下へは、
「ハードウェアウォレットによるHODL」を主とする事が推奨できます。
そして、ビットコイン等の発行上限が定められている暗号資産においては、その効果が顕著となる性質があるため、その理由を以下で詳しく説明したいと思います。
2. ナチュラル・デフレーション
2.1 ナチュラル・デフレーションとは
「ナチュラル・デフレーション」という言葉を聞いたことがある方は、もしかしたらビットコインの歴史背景等に大分詳しい方かもしれません。これは、Bitcointalkの中でThe Madhatter氏が最初に使用した言葉で、サトシもこの呼び方をとても気に入っていました。以下、サトシの記述の引用(当HPの和訳より)です。
「ナチュラルデフレーション」と仰いましたか。私はこの呼び方が気に入っています。支払いミスとデータ消失に伴い、ナチュラルデフレーションが起こる可能性があります。コイン生成は次第に遅くなり、ナチュラルデフレーションによるコイン喪失が上回ることとなるでしょう。つまり、完全にデフレーションとなるのです。
https://blockchain-nomad.com/2018/11/04/satoshi-post-11-20/
サトシの記述からもわかる通り、ナチュラルデフレーションとは、間違えたアドレスにコインを送付してしまったり、プライベートキーを忘れてしまったことにより、そのビットコインが永久的に使用できなくなってしまい、結果としてデフレーションとなることを示します。
2.2 デフレーション
ここで念のためビットコインにおける一般的な「デフレーション」の意味も確認してみましょう。以下はbitFlyer社のページからの引用です(重要な箇所に私が下線を引いたもの。)。
デフレーション
一般的にデフレーションとは、経済全体の財やサービスの価格(物価)が継続的に下落する現象で、貨幣価値の上昇を意味します。
ビットコインの発行量は年を経るごとに低減していくため、もしビットコインを使う人が増えていけば、発行量に上限のあるビットコインの価値は上がると考えられます。ビットコインはデフレ期待によりビットコイン・ネットワークの安全性を向上させるという自己完結的なシステムです。
bitFlyer社 ビットコイン用語集 https://bitflyer.com/ja-jp/glossary/deflation
つまり、ビットコインは、
- 発行量上限がある
- マイニングによる発行量は減少していく
ことから、そもそもデフレーションの特性を持つ資産であると言えます。
これに加えて説明したように、
- 送付ミス等による「ナチュラルデフレーション」
が存在するため、ビットコインは我々が思っている以上にデフレーションし易い資産なのです。
それでは、以下において、
- 今後ビットコインの発行量がどの様に推移していくか
- 現在までに一体どれだけのビットコインが消失してしまったのか
を確認してみましょう。
3. ビットコインの発行量推移
3.1 現在までの発行量
ご存知の通り、ビットコインの発行上限は2,100万BTCです。
それでは、現在までにどれだけ発行されているのでしょうか?
以下、ビットコイン発行の推移を見てみましょう。
上図からわかる通り、ビットコインの発行スピードは一定ではありません。というのも、一定期間ごとに発行スピードを減少させるように設計されているためです。そして、この事を「半減期」と言います。半減期になると、マイナーに対するブロック報酬が半減するため、ビットコインの発行スピードが遅くなります。
以下が、ジェネシスブロック(最初のブロック)が生成されたときのブロック報酬と、半減期にどれだけブロック報酬が変化したかの推移です。なお、現在までの発行量は約1740万BTCとなっています。
- 2009年1月3日 ・・・50BTC(ジェネシスブロック生成日)
- 2012年12月28日・・・25BTC(半減期1回目)
- 2016年7月9日 ・・・12.5BTC(半減期2回目)
3.2 次の半減期はいつか?
次の半減期は、以下のHPによれば2020年5月25日(2018年12月3日現在)となっており、この時ブロック報酬が12.5BTCから6.25BTCへと半減します。以降、発行量はどんどんと減少していき、2140年ごろには全て発行が完了する見通しです。
以上からも、ビットコインの今後の生成量は非常に限られており、生成スピード自体も大変遅くなっていくことは自明でしょう。これはつまり、ビットコインを欲しいと思う方が多くても、なかなか手に入らないものになることを意味します(需要の増加に対する供給の不足)。つまり、ビットコインの技術が広く認知され、素晴らしいと思う方が増えると、その価値は一気に増大していきます。
4. 失われてしまったビットコイン
4.1 今までどれだけ消失しているか
次の記事は、ビットコインは今までに既に約400万枚が消失し、約200万枚が盗難に遭っているというものです。
そして問題なのが、ビットコインの多くの投資家が、この事実をないがしろにしているか、またはその知識すらないことです。
4.2 失われるビットコイン > 生成されるビットコイン
先述の記事からも、ビットコインが約10年前に生まれてから、単純平均で約40万BTCずつ失われていることが分かります。現在のビットコインの1年あたりの生成量は656,250BTCであり、これが2020年の次の半減期には328,125BTCとなるため、この事実を基に考えると、以下の式が今後成り立つ可能性が十分にあり得ます。
失われるビットコイン > 生成されるビットコイン
このような事態になると、ビットコインは基本的には流通数が年々減少していきます。そして、半減期を迎えるごとに、それが加速してしまうのです。この極端なデフレーションを避けるためには、送付ミスを防ぐことやハッカー等による攻撃を防ぐしか方法はありません。ですが、それも人の手を介する以上、全てを防ぐことは事実上不可能と言えるでしょう。
4.3 ビットコインの喪失を防ぎデフレの恩恵を受ける者
即ち、ハードウェアウォレット+アルファ(例えば、ハードウェアウォレットを貸金庫等の安全な場所に保管し、絶対にプライベートキーが漏れないようにする等)の手段を用いてHODLしている者が、年の経過毎の「スーパーデフレーション」とも言えるべき状況の恩恵を受けることが出来るのです。
もちろん、ビットコインの有用性がしっかりと誰からも証明され、暗号資産の中でも現状以上に価値のあるものとされていく必要がある事は言うまでもありません。そのため、ビットコインの将来性を長期的な視野で期待される方であれば、取引の事を全く考えずに、しっかりと安全にビットコインを保存するだけで問題ないでしょう。これは投資の事を考える必要性がなくなるため、特に普段の仕事で忙しい方には、精神的にも時間的にもお勧めできる方法です。
5. 結論
以上の事から、ビットコインの様に発行量が限定されているコインに関しては、ハードウェアウォレットを適切に使用しHODLしていくことが、その性質から投資方法上も効果的な事が分かっていただけたかと思います。
もちろん、ビットコインの価値自体が大きく損なわれる可能性は否定できないため、暗号資産への投資と言う側面であれば、今後将来的に価値が向上すると思われる暗号資産を、複数保有しておくのがベストでしょう。
この方法は大変パッシブな投資ですが、「第三者機関が介さない電子通貨」という理念をサトシナカモトが打ち出したのは、銀行等の金融機関への不信に由来したものです(以下、ジェネシスブロックにサトシが記載した文言。イギリスのTimesの記事の見出し(2009年1月3日)で、「イギリスの財務大臣、二度目の銀行救済措置をするか?」という旨)。
03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks
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元々、この文言は暗号資産の取引所を意図するものではありませんが、現在最も広範に第三者機関として介入しているのが、「取引所」であることは間違いありません。取引所に資産を預けることによって、その資産の分散性は損なわれ過度に集中し、ハッカーによる攻撃を促進させてしまっています。
もちろん、取引所の存在自体はビットコインの価値を確かめ、その必要性を市場に問う上では重要でしょう。しかし、取引所への過度な信頼は、暗号資産の特性を損なう可能性が十分にあることを留意する必要があります。そのため、
第三者に過度に頼らず、自分の資産は自分で守る
これが出来る方が、今後も暗号資産投資で勝つのだと考えています。
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